予備試験を受けるときに選択科目を選ぶ必要があるというけど、どれを選べばいいの?
選択科目は大学の講義にもないし、何を選んだらいいのか分からない……
選択科目の対策法って他の科目と違うの?
予備試験の選択科目って何を選んだらいいか分からないし、他の科目と何が違うのかよく分かりませんよね。
私は大学の時にたまたま受けた労働法の講義が面白かったので、そのまま労働法を選択しました。
しかし、予備試験段階で選択科目が必須になったことで、迷う人は増えたのではないかと思います。
ずばり言いますと、
となります。
予備試験の選択科目は、
- 倒産法
- 租税法
- 経済法
- 知的財産法
- 労働法
- 環境法
- 国際関係法(公法系)
- 国際関係法(私法系)
の8科目の中から選ぶことになります。
各科目の特徴や、コスパの良い対策方法なども解説しますので、予備試験の選択科目選び・対策の参考にしましょう。
【2025・2026年合格目標】司法試験・予備試験|選択科目 4講座パック
1 コスパのいい予備試験のおすすめ選択科目はどれ?選択科目の特徴を解説
最初に選択科目の特徴を簡単に解説します。
選択科目は8科目ありますし、全てを勉強してみる時間は予備試験受験生にはありません。
どんな特徴がある科目なのかを知って、この後の選択科目の選び方の参考にしてみてください。
倒産法【難易度 ★】
倒産法は、破産法と民事再生法から出題されます。
破産という手続は、とてもざっくりいうと、債務超過にある人の財産をお金に換えて、債権者で分け合うという手続です。
分け合う財産に含むべきか、分け合う財産に含ませないために何ができるか、分け合う財産に含まれてしまった財産を取り戻すことができるか、などが出題されます。
債権者や債務者の話が出てきますので、民法に関する基本的な知識が必要となってきます。
民法に対する理解が深まるとも言われています。
受験者数は少ないながらも一定数いる科目ではあります。
基本書が分厚くなるので警戒してしまうと思いますが、本の厚さほど学習量はありません。
租税法【難易度 ★★】
租税法は、所得税法を中心に、関係する法人税法や国税通則法から出題されます。
課税所得に該当するか、所得分類は何なのか、所得金額はいくらなのかなどを法律や政令、判例をもとに回答していくことになります。
自分で事業を行っている人には耳なじみがあるかもしれませんが、多くの学生にとってはとっつきにくい話かと思います。
教材が多くないということもあり、受験者数は多くありません。
ただし、インプットの量は少ないと言われているので、興味がある方、税務に関する資格を持っている方、自ら事業をした経験がある方などにはコスパがいいかもしれません。
まずは所得税法や法人税法の条文、学説、判例などを押さえることが学習の中心となります。
経済法【難易度 ★★】
経済法は、独占禁止法から出題されます。
独占禁止法は、自由競争を行う企業に対して、競争のルールを定めた法律です。
学生にとってはなじみづらいとは思いますが、ときどきニュースでも耳にする法律ではないでしょうか。
試験では、企業の行為が独占禁止法に違反するか、違反するとしたら違反状態をどのように解消するかを回答することになります。
受験者数は多くないですが、周りでは検事志望の受験生が経済法を選択していました。
ちなみに、検事志望だったら経済法選択でなければいけないのかというわけではないです。
分量は比較的少ないと言われています。
知的財産法【難易度 ★★】
知的財産法は、著作権法と特許法が出題されます。
知的財産法は、目に見えないが、財産的な価値のあるものを権利として保護しようという法律です。
民法の特別法ではあるので、民法の基本的な考え方ができていると有利になります。
法律上の権利が発生しているのか、権利に基づいて権利を侵害する人に何ができるのか、などを回答していくことになります。
法律自体の具体的なイメージはつきづらいですが、対象となる知的財産(映画、本など)というのは身近なものではあるので、イメージをもって勉強しやすいかと思います。
受験者数もある程度います。
暗記しなければいけないものは少ないとはいえませんが、実際の著作物などのイメージがつきやすいので、暗記はしやすいといえるでしょう。
労働法【難易度 ★】
労働法は、労働基準法、労働契約法、労働組合法を中心に出題されます。
労働法は民法の特別法ですし、正社員として働いたり、アルバイトで働いたりしたことがある方も多いため、とっつきやすいのが特徴です。
学説をしっかり押さえるというよりは、判例や裁判例をたくさん押さえることが重要になります。
分量は比較的に多いので、分量だけ見たときのコスパはあまりいいとはいえません。
環境法【難易度 ★】
環境法では、環境10法と言われる10の法律から出題されます。
- 環境基本法
- 環境影響評価法
- 大気汚染防止法
- 水質汚濁防止法
- 土壌汚染対策法
- 循環型社会形成推進基本法
- 廃棄物処理法
- 容器包装リサイクル法
- 自然公園法
- 地球温暖化対策推進法
イメージとしては行政法に近く、個別の法律の解釈を暗記していくというものではありません。
インプットの量はかなり少ないようで、短期間で合格点を取りに行くにはオススメと友人は言っていました。
国際関係法(公法系)(国際公法)【難易度 ★★★】
国際公法は国際法、国際経済法、国際人権法と言われるものから出題されます。
本当に申し訳ないのですが、国際公法は周りに受験者がほとんどいないうえに、自分で軽く目を通してみても、どういう問題なのか把握ができていません。
頑張って確認してみてもいいのですが、中途半端なことになりかねませんので、興味を持った方は実際の受験生が書いたブログなどを参考にしてみてください。
受験者数が最も少ない科目になります。
わずかにいる知り合いは、国際公法について詳しいので、精鋭が集まっているのではないかと推測しています。
とても興味がある人には興味があってコスパがいいかもしれませんが、特に興味がない人にはコスパがいいとはいえません。
国際関係法(私法系)(国際私法)【難易度 ★★】
国際私法は、法の適用に関する通則法や民事訴訟法の国際管轄から中心的に出題されます。
分量が比較的少ないと言われており、「先輩にコスパがいいからとおすすめされた」という理由で選んだ人が多い印象です。
国際私法というと馴染みがなさそうですが、海外の法律を勉強するわけではありません。
渉外事務所でしか使わないようなイメージを持たれるかもしれませんが、国際結婚などもありますので、どのような弁護士でも勉強しておいて無駄になることはありません。
2 予備試験の選択科目を選ぶ5つの基準
コスパがいい科目を紹介しましたが、予備試験の選択科目を選ぶ基準はそれだけではありません。
むしろ事前に耳にしていたコスパの情報だけで予備試験の選択科目を選ぶと、選択科目の勉強が苦痛になって肝心の成績が伸びないということになりかねません。
ここでは、予備試験の選択科目を選ぶ5つの基準を解説します。
- 興味関心があるか
- 教材が豊富にあるかどうか
- 受験者数がどのくらいいるか(受験者数の割合)
- どのくらいの勉強時間が必要か
- 実務に出て使うかどうか
①興味関心があるか
興味関心があるかは、最も重要な基準と言っても過言ではありません。
興味関心がある科目であれば勉強のモチベーションがあがりますし、その分合格の可能性が高まります。
第一章で解説した特徴も踏まえて興味関心を持てるかを考えてみてください。
どうしても興味関心がある科目がないという方は、他の基準を優先して選ぶのがいいでしょう。
②教材が豊富にあるかどうか
何の教材もなく予備試験の選択科目の勉強をするのは不可能です。
だから、教材が豊富にあるかどうかも重要な基準です。
もっとも、選択科目の勉強のためにあまり手を広げるのは良くないので、基本は予備校の教材をベースに勉強するべきです。
基本書も手を広げないために1冊に絞るのがいいでしょう。
③受験者数がどのくらいいるか(受験者数の割合)
受験者数がどのくらいいるかは、周りに一緒に勉強することができる人がいるか(=勉強内容を相談できるか)どうかに関わります。
他にも、受験者数が多いほど予備校も力を入れるので、教材が豊富にあるかにも関わってくることとなります。
環境法、国際関係法(公法系)以外の科目であれば受験者数は十分にいるといえるのであまり心配する基準ではありません。
③どのくらいの勉強時間が必要か
予備試験の合格にあたって重要なのは、選択科目以外の科目です。
他の受験生も選択科目には力を入れていないので、選択科目の出来が良くなくても、受験生の中で相対的に悪い成績にならないのです。
そうなると、どのくらいの勉強時間である程度の点数が取れるかというのも重要な基準となります。
もっとも、どれくらいの勉強時間が必要かは、明確な数字があるわけではありません。
予備試験の選択科目は、法律基本科目のどれかの科目と関連しています。関連している科目が得意かどうか、どのくらいの関連性があるかを基準に考えるのがオススメです。
⑤実務に出て使うかどうか
せっかく選択科目として勉強したのであれば、そのまま法曹として実務に出たときにも知識を生かすことができます。
もしも、こういった実務家になりたいというビジョンがあるのであれば、そのときに使う選択科目を選ぶのがいいでしょう。
ただ、実際に実務に出てみればわかりますが、選択科目として選ばれている科目(のほとんど)は、実務で必要となってきます。あくまで、実務に出たときにスムーズに知識を生かせるというだけに過ぎません。
特に得意にしたいという分野でなければ、優先すべき基準にはならないでしょう。
3 こだわりがなければ選択科目は「労働法」を選べ!おすすめする4つの理由
選択科目の選び方の基準を解説しましたが、予備試験の受験段階の方は、基本法律科目の勉強も途中の人が多いでしょうから、どの選択科目を選んだらいいか迷うかと思います。
そんな方には、「労働法」を選ぶことをオススメします。
理由は、以下の4つです。
以下では、詳しく解説していきます。
受験生の数が多いから
労働法は後で説明しているとおり、もっとも受験生の割合が多い科目です。
それだけ教材の数が多く用意され、一緒に勉強する人も見つかりやすいです。
教材の数が多いから
受験生の数が多いのと同じですが、受験生が多い分、教材も多くなっています。
模試や答練でもまともな問題や採点をしてもらいやすいので、予備校派の人にとっても勉強しやすいといえます。
民法の特別法だから
民法の特別法であることで、効率的な学習が可能となります。
労働法は、基本的に民法の特別法です。
民法第三編第二章第八節(623条〜631条)にも雇用契約の規定がありますよね。
そのため、基本的な考え方は、「民法の考え方をベースとして修正するべき箇所だけ押さえる」となります。
民法との対比をしながら学習をすることで、脳のリソースを節約することが可能なのです。
しかも、答案の書き方も民法と変わらないので、一度インプットしてしまえば、すぐに答案を書き始めることも可能です。
私は、辰巳法律研究所の「1冊だけ労働法」の論証集パートを横に置きながら、水町勇一郎「労働法」を一回読み、そしてすぐに司法試験の過去問を実際に考えてみるところから勉強をスタートしました。
事案のイメージを掴みやすいから
労働法は、身近な労働というものを取り扱うため、事案のイメージを掴みやすいです。
その分、基本書も最初から読めますし、問題文を理解するのも簡単です。
イメージが掴みやすい分、他の科目よりも時間を節約できて、合格するために必要な知識をタイパよく身につけることができるのです。
3 予備試験の選択科目別受験生の人数・割合
予備試験を選ぶ基準の一つに「受験者数がどのくらいいるか」があると解説しました。
そこで、令和6年度予備試験における選択科目別受験生の人数と割合を紹介します。
(出典:法務省 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji07_00213.html )
出願者数 | 15,764人 | |
倒産法 | 2,959人 | 18.77% |
租税法 | 749人 | 4.75% |
経済法 | 2,155人 | 13.67% |
知的財産法 | 1,594人 | 10.11% |
労働法 | 5,845人 | 37.08% |
環境法 | 452人 | 2.87% |
国際関係法(公法系) | 492人 | 3.12% |
国際関係法(私法系) | 1,518人 | 9.63% |
4 予備試験の選択科目の勉強法 4つのポイントを解説
予備試験の選択科目を勉強する方法には、4つのポイントがあります。
どうしても後回しになりがちな選択科目ですので、法律基本科目の勉強とは異なるポイントを理解して効率よく勉強しましょう。
- 選択科目以外の勉強を進める
- 選択科目のコツをつかむ
- 基本的な法令、裁判例を理解する
- アウトプットしながら、インプットの精度をあげる
①選択科目以外の勉強を進める
選択科目以外の勉強を進めるというのは遠回りのように見えて実は近道です。
選択科目の法律は、法律基本科目と全く思考方法が違うというものではありません。
選択科目の法律は、それぞれ法律基本科目の特別法や個別法であり、そうでなくても思考方法は似通ったものがあります。
法律基本科目の「基本」を押さえていない状況では選択科目の勉強効率があがりません。
8科目あると捉えるのではなく、7科目+1科目と捉えるのがいいでしょう。
そうすることによって効率的に選択科目を身につけることができます。
②選択科目のコツをつかむ
これは法律基本科目も同じですが、その科目のコツをつかみましょう。
例えば、憲法であれば、
- 違憲審査基準があること
- 違憲審査基準がそれぞれ利用される場面があること
- 違憲審査基準を学ぶためには判例を学ぶ必要があること
ということを理解していなければいつまで経っても予備試験の答案を書くことはできません。
それぞれの選択科目で、答案を書くためには何を知っておく必要があるのか、それを知るための対策は、法令だけで足りるのか、判例まで知っておく必要があるのか、学説も押さえる必要があるのかというコツを早めに身につけましょう。
そうすることで、合格できる予備試験の答案というゴールに向かって一直線に対策をすることができます。
③基本的な法令、裁判例を理解する
選択科目のコツをつかむということとも近いですが、基本的な法令と裁判例を理解するのは必須です。
基本的な法令や裁判例は、選択科目の全体像を掴むのに役立ち、個別の論点だけでは理解しづらいことも、全体像を把握できていることでスムーズに理解をしやすくなるためです。
いきなり正確に理解するのは難しいので、
をまずは把握しましょう。
④アウトプットしながら、インプットの精度をあげる
予備試験の選択科目は、法律基本科目よりもアウトプットに入る時期を早めにしましょう。
法律基本科目を一通り勉強しているのであれば、予備試験ではどのような問われ方をして、どのように回答するべきなのか、そして、答案を書くために何を勉強するべきなのかは簡単につかめるようになっているはずです。
だからこそ、アウトプットを早めに入ることで、無駄のないインプットをすることが可能となります。
無駄のないインプットは、時間効率を圧倒的に上げることとなります。
5 予備試験選択科目のコスパをあげる3つの具体的な方法
予備試験選択科目の勉強法のポイントを説明しましたが、このポイントを意識していれば、既にコスパは十分上がっているといえます。
しかし、実際にどのような方法を使えばいいのか分からないかもしれません。
そこで、予備試験選択科目のコスパをあげる3つの具体的な方法を解説します。
- 予備校の講座を利用する
- 予備校の書籍を積極的に活用する
- 最初から過去問を解いてみる
①予備校の講座を利用する
各予備校では、オプションの講座や個別の講座で選択科目の講義を出しています。
予備校の講座では試験対策に重要なポイントに絞った講座をしてくれるので、それだけで勉強方法のポイントを押さえることが可能となります。
もちろん、デメリットとして費用がかかりますので、自分のお財布事情と相談して利用をするかどうか決めましょう。
あくまでコスパを挙げる方法なので、私としては必須とまでは思っておりません。
答練など受けていきたいというタイプの方には、そもそも答練自体が少ないことから、基本講義もセットになっているアガルートの講座がいいかもしれません。
【2025・2026年合格目標】司法試験・予備試験|選択科目 4講座パック
②予備校の書籍を積極的に活用する
予備試験の選択科目は、予備校の書籍を積極的に活用することでコスパがあがります。
予備試験の選択科目は、法律基本科目よりも試験対策に有効な学者本が少ないため、必然的に予備校の書籍の重要度が上がるからです。
私は労働法選択科目でしたが、辰巳法律研究所の「1冊だけ労働法」を活用していました。
この本は、趣旨規範ハンドブックと過去問(参考答案つき)がまとまっているので、この1冊だけで予備校本は十分となります。
趣旨規範ハンドブックの部分はそのままでは使いづらいので、私は自分なりに加工して使用していました。
③最初から過去問を解いてみる
法律基本科目の勉強がある程度進んでいる受験生であれば、初めての問題でも問題を読んで、六法を引いてある程度の論点は理解できるはずです。
最初から過去問を解いてみることで、自分には何が足りないのか(知識が足りないのか、答案の書き方が悪いのか)などが早めにわかるはずです。
ピンポイントで必要な対策をとることで、コスパ良く予備試験の選択科目の対策が可能です。
6 この記事のまとめ
予備試験の選択科目の選び方にはいろいろな考えがあり、これがベストだという科目はありません。
しかし、受験生のみなさんにとっては、興味があるのか、周りに受験する人がいるのか、などの状況によっては、ベストな選択肢というものは存在します。
それでも迷うという人は、私と同じく労働法を選択してみてください。
イメージは掴みやすく、民法と同じイメージで対策ができるので、分量の割りには苦労はしません。
予備試験の選択科目を勉強する際には、
- 選択科目以外の勉強を進める
- 選択科目のコツをつかむ
- 基本的な法令、裁判例を理解する
- アウトプットしながら、インプットの精度をあげる
の4つを意識することで、コスパよく対策をしていきましょう。
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