司法試験・予備試験でパソコン受験が始まるって聞いたけど、何が変わるのかよく分からない……
パソコン受験になると言われてもよく分からないですよね。
なんとなく「パソコンで答案が書ける」くらいに思っている受験生の方も多いのではないでしょうか。
従来の手書き方式からパソコン受験への移行は、受験生にとって大きな変化です。
新しい試験形式に戸惑い、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。今回は、そんな受験生の不安を解消するために、パソコン受験について詳しく解説していきます。
具体的な仕様を把握して、早めに対策をすることで試験対策を有利に進めていきましょう!
※注意
この記事は、2024年11月時点で法務省から公表されている情報に基づいて作成されています。
今後、仕様が変更される場合もありますので、最新の情報を確認してみてください。
出典:法務省 https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00238.html
1 これだけ見れば分かる!司法試験・予備試験のパソコン受験
2 パソコン受験の開始時期は令和8年度から順次スタート
パソコン受験の開始時期は、令和8年度からとなります。
対象となる試験は、司法試験と予備試験で異なりますので注意が必要です。
2−1 司法試験は、令和8年度からパソコン受験完全スタート予定
司法試験については、令和8年度の試験から、短答式試験・論文式試験のいずれにもパソコン受験が予定されています。
2−2 予備試験は、令和8年度から論文のみパソコン受験スタート予定
予備試験は、令和8年度の試験から論文式試験のみが対象とされる予定です。
短答式試験は、いつから予定されているのかは公表されていません。
口述式試験は今後も対象とはならないでしょう。なぜなら、明確に言及されていませんが、パソコン受験は「筆記試験」を対象とすることとされているからです。
3 司法試験・予備試験のパソコン受験の具体的な仕様
3−1 司法試験委員会が用意したパソコンを使用して、集合形式で行う
パソコン受験で使用されるのは、司法試験委員会が用意したノートパソコンです。
試験の公正の観点から、自分で持ち込みをすることはできないでしょう。
現行と同じように、会場が指定されて、そこに集合して司法試験・予備試験が開かれることになります。
遠方の受験生が全国7つの会場に行かずに受験できるというわけではありません。これも、試験の公正の観点からでしょう。
3−2 使用するノートパソコンのスペック
現在では、以下の基準を満たすノートパソコンを使用する予定となっています。
OS | Windows 11 Pro |
CPU | 1.5 GHz 以上のマルチコアプロセッサ |
メモリ | 8GB 以上 |
画面解像度 | 1920×1080 ピクセル以上 |
モニターサイズ | 16 インチ以上(モニターの対角線の長さが 40.6cm 以上) |
ネットワークインターフェース | IEEE802.11ac 対応 |
パソコン受験で必要なのは
- 問題文の表示
- 解答画面の表示
- 法文(六法)の表示
くらいのものですので、上記のスペックであれば十分に作動するのではないかと思います。
ちなみに、モニターのサイズのイメージは、下の画像のとおりです。
法務省が用意したパソコン受験用のソフトの使い勝手が悪くてストレスを感じるということはありそうです……
裁判で使うようになったmintsというサービスもあまり使い勝手が良くないので…
3−3 使用するノートパソコンのキーボード配列
Windowsの日本語用キーボードで、
- 106キーボード
- 108/109キーボード
- 112キーボード
のいずれかを使用することが予定されています。
この106,108,109,112とは、キーボード上のキーの数を示しています。
いずれもテンキー付き(主に数字を入力する右側にあるキーのこと)で、
106キーボードにWindowsキー2つとアプリケーションキー1つを加えたものが109キーボード
109キーボードにPower、Sleep、Wakeupキーがあるものが112キーボードとなります。
司法試験・予備試験で必要なのは、基本的には文字の入力だけであり、数字を入力するのにテンキーを使うまでの必要はないと思われます。
108以上のキーがあっても、それは使用しないので、あまり大きな影響ないでしょう。
3−4 マウスは備え付けられる予定
後述するように、ショートカットはマウス操作により行うことが予定されています。そのため、ノートパソコンのトラックパッドを使用するのではなく、マウスが備え付けられていることが想定されます。
どのようなマウスが備え付けられるかは不明です。
司法試験の問題文は長いので、マウスにホイールは欲しいですよね。
3−5 文字入力ソフトは、日本語 Microsoft-IME
文字入力ソフトは、日本語 Microsoft-IME が予定されています。
ソフトがそのままであれば、変換候補も同じように表示されるはずです。
ただし、予測文字変換、手書き入力などは使用できないことが公表されています。
意味はあるのか…と思いますが、今までと同じように当然に知っているべき漢字などは、覚えておくようにしましょう。
3−6 コピー・ペースト・検索は可能。
コピー・ペースト・検索の機能は利用できるようになっています。
しかし、キーボードのショートカットは使用できない予定になっています。
画面に表示される「コピー」「貼り付け」といったボタンをマウスポインターで押すことが予定されているようです。
普段Ctrl+C、Ctrl+Vでの操作に慣れている人には、いったんキーボードから手を離して、マウスに手を伸ばし、対象箇所をドラッグしたうえで、ボタンを押すというのはストレスに感じるでしょう。
3-7 メモ機能の予定は不明
答案構成などを行うメモの機能があるかは現段階で不明です。
回答画面のものをコピーしてメモに貼り付けして、やっぱり元に戻そうとなったときに再度メモからコピーして貼り付けることができたら便利ですよね。
手書きのときにはなかったメリットなので、ぜひ実装して欲しいです。
私が予備試験を受けたときは、15行くらい書いたものを横線で消して、その後にやっぱり同じような内容を書き直したことがありました。
時間的な問題があるのはもちろん、受験生にとっては精神的な負担が大きいですよね…
3−8 短答式試験で解答の修正・スキップは可能
短答式試験で後から解答を修正することや、分からない問題をスキップして後で解答することは可能とする予定になっています。
現状ではどのような画面で操作をするのかは不明です。
3−9 法文(六法)は横書きでの表示予定
現在でも法律を検索したときに出てくるe-Govのように、横書きでの表示を予定されています。
特定の条文へのジャンプ機能や文言の検索機能があるかは現時点では不明です。
個人的には、法文は配布にしてもらって、画面上には表示しない方が嬉しいですね。
弁護士として起案するときに、e-Govを開くときもありますが、やはりデスクに六法を開いて、横目に見ながら起案する方がやりやすいです。
4 パソコン受験での注意点4つを解説
パソコン受験の仕様を説明しましたが、今公開されている情報をもとに、パソコン受験での注意点を解説していきます。
主にこの4点を注意するべきじゃないかと考えております。
4−1 試験の傾向が変わる可能性がある
パソコン受験となることで、試験の傾向自体も変わる可能性があります。
なぜならパソコン受験となることで、今までよりも筆記にさく労力が減り、その分分量が増える可能性があるからです。
4−2 横書の法文を使うことになる
仕様でも説明しましたが、法文は横書きになり、画面に表示されることになります。
普段受験生が使用している販売されている六法は、縦書きのものです。
普段と違う横書きのものを使用することで、条文を見つけるのに普段より苦労するかもしれません。
4−3 採点傾向が厳しくなる可能性がある
今までは、筆記スピードや文字が読めるかどうかも得点に影響していました。
文字が読めないことがあるということは採点実感でも言及をされています。
パソコン受験となることで、誰の文字でも読めることとなりますので、今までよりも採点者が文字を簡単に読み込めることとなり、その結果、記述内容自体に鋭い突っ込みが入れられる可能性があるでしょう。
4−4 相対的な順位が下がる可能性がある
今までも実力はあるけれど、筆記スピードが遅いとか、著しく文字が汚いという受験生もいました。
しかし、パソコン受験となることで、その人たちの順位が上がる可能性があります。
そうなると、今までよりも相対的に順位が下がる可能性があるでしょう。
5 パソコン受験の対策を今から行うべき人は、これから予備試験を受験する人
パソコン受験の仕様が変わることで、パソコン受験の対策は必須となります。
対策をする必要があるのは、これから予備試験を受験する人です。
司法試験のパソコン受験が開始するのは令和8年度からということですので、既に司法試験受験資格を持っている方は、パソコン受験の対策をせずに、令和7年度の司法試験を一発で合格できるように対策しましょう。
パソコン受験の対策は大きく変わらないので、令和7年度の司法試験に不合格となる可能性など考えている時間は持っていないです。
6 パソコン受験の対策7つを解説
これから予備試験を受験するという方のために、パソコン受験の対策6つを解説していきます。
本質的な対策は法律の勉強ですから、ここで解説する内容を押さえておいてさくっと対策しましょう。
6−1 タイピングに慣れるようにしておく
普段スマートフォンをメインで使っている方は、タイピングに慣れるようにしておきましょう。
最低限、タッチタイピングができるようになっておく必要はあります。
タッチタイピングの対策は、「タッチタイピング 練習」などで検索して調べることをオススメします。
簡単に解説すると、
の4つが重要です。
単語を入力していく練習サイトなどありますが、司法試験・予備試験で入力するのは文章です。
文章入力には、入力する頻度が多い文字・低い文字などもありますから、単語を入力する練習サイトよりも自分で文章を入力しながら慣れていく方が有効でしょう。
一つの基準ですが、イータイピングというサイトでAランクが取れれば全く支障はないのではないかと思います。
練習用というよりは、対策する必要があるかどうかで使用してみてください。
https://www.e-typing.ne.jp
6−2 Windowsのキーボード入力に慣れるようにしておく
私も含めて普段Macのパソコンを使用している方にとっては、Windowsのキーボード入力は少し違和感があるはずです。
公開されている仕様からすれば、かな入力切り替えのキーは使用する必要はないと思いますが、慣れておくに越したことはないでしょう。
6−3 横書きの法文での探し方に慣れておく
縦書きの法文と横書きの法文では探すときの印象が違うと思いますので、横書きの法文にも慣れておきましょう。
具体的には、e-govをときどき使ってみるということで十分です。
普段は縦書きの法文を使い、
- 法律の条文構成を理解しておく
- 使うことが多い条文の条数はなんとなく把握しておく
ということができていれば、横書きでもなんなく対応はできるでしょう。
6−4 時間配分を考えておく
今までは、多くても試験時間の3分の1程度を答案構成に使用している受験生が多いのではないかと思います。
今後も同じですが、答案入力にかかる各自の時間によっては、答案構成にかけることができる時間は増える可能性があります。
自分の答案入力にかかる時間を把握しておいて、事前に模試などで練習をすることで、本番で時間配分を間違えないようにしておきましょう。
6−5 トラブルが起きたときのことを事前に想定しておく
パソコン受験はこれから始まる制度です。
当然、パソコンを使用しての試験ですから、トラブルが起こる可能性は想定されます。
司法試験委員会としても当然対策を取っていると思いますし、トラブルの時の対応を考えていると思います。
しかし、実際にトラブルが起きてしまったら、それだけで焦って本来の力を出せなくなる可能性があります。
事前にトラブルが起きるものと想定していれば、焦る度合いが低くなるので、本来の力を出しやすくなるでしょう。
試験直前にも把握しておく事項の一つとして認識しておきましょう。
6−6 CBT試験の練習版や体験版を経験しておく
CBT試験のソフトは通常使用するようなものではないです。
練習版や体験版を経験しておくことで、操作方法に慣れることができます。
模試を受けたとしても、模試で使用するソフトが本番のソフトとは多少でも異なる可能性は否定できません。
最低でも一度は練習版・体験版を経験しておくことで、本番でも焦らないようにしていきましょう。
6−7 一度は模試を受けて経験をしておく
ソフトやハードに慣れていくことはもちろん重要ですが、パソコン受験というもので司法試験・予備試験の問題を解くとどうなるのかということは経験しておくに越したことはありません。
模試を受験したら
などを振り返っておきましょう。
現在パソコン受験に対応していると明言している予備校は見当たりませんでした。
ただ、アガルートのみは、2024年10月からスタートするオンライン添削で「CBT方式(パソコン受験)に対応しております。」と明言しております。
7 まとめ
司法試験・予備試験のパソコン受験が令和8年度からスタートします。
- 主な変更点:
- 試験形式: 筆記試験がパソコンで行われる。
- 使用機器: 司法試験委員会が用意したノートパソコンを使用。
- 入力方法: 日本語Microsoft-IMEを使用、ショートカットキーは使用不可。
- 法文表示: 横書きでの表示、検索機能などが予定。
- 受験生への影響:
- メリット: 答案を書くのが楽。答案の修正やスキップが容易に。
- デメリット: タイピング速度や横書きの法文への対応が必要。
- その他: 試験の傾向や採点基準が変わる可能性も。
- 対策:
- タイピング練習: タッチタイピングの習得がおすすめ。
- 横書き法文への慣れ: e-Govなどを活用して練習。
- 時間配分: 答案入力時間を考慮した時間配分を練習。
- トラブル対策: トラブル発生時の対応を想定しておく。
- 模試受験: パソコン受験の経験を積む。
パソコン受験の特徴を素早くつかみ、適切な対策を行うことで、合格に近づきましょう。
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