平成29年度司法試験公法系第1問(憲法)の問題
平成29年公法系第1問の問題は、移民に関する新制度について、憲法上の問題を検討させる問題です。
法務省のウェブサイトに問題文がありますので、問題の内容についてはこちらを参照してください。
参照:法務省ウェブサイト
https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00145.html
私の憲法の成績(A 132.02点)
こちらの成績表のとおり、憲法は順位ランクでA評価となり、得点は公法系科目で132.02点でした。
法務省が公開している平成29年司法試験論文式試験得点別人員調(公法系科目)によれば、
132.02点というのは、3937人中128番以内の点数であり、上位3.25%に入ります。
出典:法務省ウェブサイト 平成29年司法試験論文式試験得点別人員調(公法系科目)
私の感想としては、憲法よりも行政法の方ができたという印象です。
ただ、上位評価は受けられていると思いますので、参考にしていただければと思います。

再現答案
この再現答案は、試験終了後1週間以内に作成したものです。
問題に対してどのように回答しようかという考え自体が頭に残った状態で作成しましたので、ほぼそのまま再現されています。
答案の分量としては、6ページ半から7ページくらいとなります。
私は、
・答案用紙の左端から右端まで書く
・必要のない改行はしない
・文字は少しだけ小さい
・書いたものを削除して書き直したりしていない
という答案の書き方をしていました。
人によっては、同じ内容でも7ページから7ページ半くらいの分量になるかもしれません。
設問1
1 私が弁護士甲であるとしたら①法15条8号は女性の自己決定権を侵害し憲法13条および24条2項を侵害し違憲である②法18条,23条2項は憲法33条,34条に違反し違憲である,との主張を行う。
2 ①について
(1) 憲法13条後段は幸福追求権を定めており,前段では個人として尊重することを定めている。このように個人としての尊重を定めていることから,後段の幸福追求権については,自己に関することは自ら決定できるという自己決定権を保障しているものと解すべきである。妊娠するということも家族のあり方をどのようにするかに関わり,自ら決定すべき事項であるから,自己決定権で保障される内容となる。
また,24条2項は家族に関する事項について個人の尊厳を重視するべきことを定めている。これは,家族のあり方について個人を尊重すべきことを定めたものであり,妊娠という家族形成の過程についてもこれを尊重すべきことを保障しているといえる。
法15条8号は本邦滞在中の妊娠を禁じており,上記の自己決定に介入するものとして自己決定権を制約しているといえる。
(2) 憲法は第三章で「国民の権利及び義務」と定めているが,前文及び98条2項で国際協調主義を採用していること,憲法上の権利には自然権も含まれていることから,性質上外国人に保障されないものを除いては憲法上の権利は外国人にも保障されると解されている。
自己決定権は,個人の尊重に関わるもので自然権的権利といえるうえ,保障したところで我が国の存立に影響はないことから性質上保障されないものとはいえない。よって,外国人であっても自己決定権は保障される。
(3) 我が国の憲法が個人を尊重していることからすると,自己決定権は個人のあり方にとって最も重要なものであるということができる。
これに対して,上記の制約はこれを直接的に禁ずるものであって強力な制約であるといえる。
そこで,最も重要な権利に対する強力な制約は違憲の疑いが強く,その違憲性の審査は厳格になされるべきである。よって,厳格な基準によるべきである。具体的には目的が必要不可欠であり,目的を達成する上で手段が必要最小限度であるときに限り合憲とする。
(4)ア 目的について
法15条8号の目的は,特定労務外国人が日本に長期定住することで日本国民との社会的・政治的な軋轢を防ぐことにある。このような目的は確かに重要であるが,前述のように憲法は国際協調主義を採用しており,しかも現代では国際化が進んでいる。このような憲法の主義および現代の状況からすると,外国人と日本人との軋轢を防ぐというのは,必ずしも優先されなければならない目的とはいえない。
よって,目的は必要不可欠とはいえない。
イ 手段について
法は妊娠を禁ずるとともに,妊娠した場合には収容(法18条),強制出国(法23条2項)こととしているが,滞在期間の経過後に更新を認めず出国を促すという手段もありうるところである。
また,全く妊娠を禁ずることなく,妊娠した場合には更新を拒絶するという手段をとったとしても3年ごとに更新が必要な制度からすれば,外国人との軋轢を防ぐという目的は十分に達せられる。そして,こちらの方が特定労務外国人にとってその権利制限の程度は低い。よって,手段が相当性を欠くといえる。
したがって,手段は必要最小限度とはいえない。
(5) 以上より,法15条8号は13条および24条2項に反し違憲である。
3 ②について
(1) 憲法33条は権限を有する司法官憲が発する令状がなければ逮捕されないとしている。また,34条では弁護人依頼権を与えられなければ抑留又は拘禁されないとしている。
これらの規定は刑事手続きを想定しているが,行政手続きであっても同様に身体の自由を侵害する場合には手続保障を欠いてもよい理由にはならないから準用されることになる。
(2) 法18条1項は,嫌疑者を収容することができるとしているが,収容は最大14日間続くことからすると(法18条5項),これは刑事手続である逮捕及び勾留と同視することができる。
よって,憲法33条及び34条が準用されるところであり,裁判官の発する令状及び弁護人依頼権と同等の手続保障がなされるべきところ,特労法ではこれがない。
したがって,法18条1項は憲法33条及び34条に反し違憲である。
設問2
1 ①について
(1) 国からは,外国人の入国・滞在の可否は国家の主権的判断に属するものであるから,憲法上の権利の保障もその範囲内でなされているに過ぎない。よって,外国人の人権については広く裁量を認めるべきであって本件の規制も合憲であるとの反論が想定される。
(2) しかし,このように国に外国人の滞在の可否について広い裁量が認められていたとしても,それは国家の安全のために過ぎない。国際化した現代においては,入国・滞在の可否について国が判断権を有していることから,直ちに外国人に対する人権制約が許容されることになると考えるのはもはや妥当ではないと私は考える。
もっとも,どのような場合に国家の安全が害されるかは国会の判断に委ねざるを得ないことからすれば,その裁量は一定程度認められ,違憲審査についても比較的緩やかになされるべきである。具体的には,目的が正当であり,目的と手段との間に合理的関連性があれば合憲となるものと解する。
(3)ア 目的について
設問1の通り,法15条8号の目的は,国家として未然に軋轢を防ぐことも必要であり,正当なものといえる。
イ 手段について
3年の更新を拒絶するという原告の考え方もあるが,その時に出産した子供をどのように扱うかなどの問題もあることからすると,そもそも妊娠を禁じるということも軋轢を防ぐために,合理的といえる。
また,特定労務外国人の認証を受けるにあたって禁止行為をしないという誓約書を提出することになっている。このように禁止行為を認識して認証を受けている以上,自己決定権を制約されるのも止むを得ず,このような者に対して妊娠を禁止することも合理的である。
以上より,目的と手段との間に合理的関連性があるといえる。
(4) 以上より,法15条8号は合憲である。
2 ②について
(1) 行政手続きにおいてどの程度刑事手続について定めた31条以下の規定が準用されるかは,様々な事情を考慮すべきところ,特定労務外国人については労働力確保の目的のために入管法の規定が適用されずに容易に入国できるのだからこれに応じて出国も容易にできるべきであるから,33条や34条はそのまま準用されず,同条違反にはならないとの反論が想定される。
(2) 反論の通り,行政手続きに刑事手続について定めた規定を準用するためには,その目的,侵害される利益の内容,他の制度の関連などを考慮してどの程度準用されるものか判断すべきである。
本件では,確かに容易に入国できるための制度を設けたことからすると,出国についても迅速になされるべきだといえる。しかし,出国の過程では最大14日間の収容がなされ,身体の自由に対する制約が大きいこと,過去に出国を強制されると再び特定労務外国人としての認証を受けることができないという不利益があることからすれば,迅速な出国の必要性のみを持って手続保障を欠いてよいことにはならない。
そこで,嫌疑者の不利益に鑑みて,収容には逮捕・勾留と同程度の手続保障を,強制出国には入管法と同程度の手続保障がなされる必要があると解する。
(3) まず,収容に当たっては,裁判官の令状はなく,警備官が法15条各号に該当する事実があると疑うに足りる相当な理由がある場合に収容することができるとされている。しかも,収容は14日間続くこともあり,その不利益は大きい。このように,第三者からの法15条各号該当性の審査がないことからすれば,手続保障としては不十分であり,憲法33条を準用するとこれに反することになる。
(4) 次に,強制出国のためには審査官の審査を経る必要があるとされている。
審査官は在留管理等の業務に10年以上従事した経歴があり,一定試験に合格したものから任用するなどその経験と能力については担保がなされているといえる。また,審査官となったものは,警備官の行う業務に携わらないことで客観的な立場は保障されている。
しかし,入管法と異なり,異議申し立ての手続については設けられていない。上記のような不利益性に鑑みれば,憲法34条で保障されている弁護人依頼権と同程度の異議申し立ての機会は保障されるべきである。
よって,憲法34条が準用され,これに反することになる。
(5) 以上より,法18条は憲法33条及び34条に違反し違憲である。
以上
コメント
司法試験・予備試験の憲法はいつもそうですが、全く予想していなかったテーマが出題されて戸惑った記憶があります。
しかし、憲法の全体的な知識をベースに、下手に独自解釈を書かないことを意識していました。
その結果、ある程度まとまりのある答案にはなったのかと思います。
憲法だけの点数ではないですが、現場ではこんな感じに作成するものだという参考にしてみてください。


コメント